energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

アメリカで広がる"Community Choice Aggregation"とは?

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皆さんはCommunity Choice Aggregationという言葉を聞いたことがあるだろうか?

 

恥ずかしながら、私はつい最近まで聞いたことがある気がしても、実態としては全く理解していなかったが、こいつの動きが最近無視できないレベルにまで拡大してきている気がするので少し調べていきたいと思う。

 

Community Choice Aggregation(CCA)とは、「コミュニティが独自に電力調達の選択肢を持つこと」である。こう言われても「なんのこっちゃ?」と思われると思うので(書いている自分でもそう思う)、もう少し丁寧に見ていきたい。

 

多くの市場において、電力というのは誰から買えるかが制限されていることが多い。日本では2016年4月から家庭向けの電力小売が自由化され、私たちは誰から電力を買うかを選択することができるようになったが、これまでは東京都民であれば東京電力大阪府民であれば関西電力といった具合に、その地域を管轄していた電力会社からしか電力を買うことができなかった。

 

例えば、アメリカのカリフォルニア州の多くのエリアにおいては、原則として地元の電力会社からしか電力を購入できないこととなっている(厳密に言えば、Direct Access等という例外措置があるがここでは割愛する)。

 

しかし、そのような状況において、一般の消費者がこう言うのだ。「私たちは電力調達の選択肢を制限されている」「本当はもっと低価格で電力を買うことができるのではないか」「本当はもっとクリーンな電力を使いたいのに、これでは電力会社の提供する電気以上にクリーンな電力が買えないではないか」と(本心からこんなことを言う人がどれほどいるのかは分からないが)。

 

そこで編み出された一つの案がCCAである(と、少なくとも私は理解している)。上述の通り、CCAは「コミュニティが電力調達の選択肢を持つこと」である。市や群といったコミュニティレベルでまとまり、地元の電力会社が提供するメニューとは異なる電力調達の選択肢を生み出すのだ。

 

例えば、北カリフォルニアにPeninsula Clean Energy(PCE)というCCAがある。PCEが何をしているかというと、特定地域(具体的にはPCEの場合はSan Mateo群)の消費者に対して、再生可能エネルギーが50%または100%含まれた電力を提供しているのだ。

 

ここで強烈なのは、PCEの顧客獲得方法だ。PCEに限らず、多くのCCAは顧客を獲得するに当たって「Opt Out方式」を採用している。これはどういうことかというと、消費者はある日、「今度から地元の電力会社(PG&E)に代わってPCEがあなたに電力を提供しますよ」という通知を受け、それを拒否(Opt Out)しない限りは自動的にPCEの顧客になる、ということである。

 

一見するとかなり乱暴な顧客獲得方法であり、ほぼ知らぬ間に電力の調達先を切り替えられた消費者からクレームが続出しそうにも思えるが、どうも今のところカリフォルニアではそうなっていないらしい。それどころか、このCCAは非常に好評を博しているというのだ。

 

2018年9月時点でカリフォルニア州全体で19のCCAが設立されており、260万の消費者に対して電力を提供しているとのこと。CCAの活動が最も活発なのは北カリフォルニアを管轄する電力会社であるPG&E管内であり、同管内の540万顧客の内、実に210万顧客がCCAによる電力提供を受けているというのだ。

 

なぜCCAに対してクレームが続出しないかというと、恐らく(多くの場合において)①CCAの方が電力会社よりも電力料金が安いから、②CCAが一定割合のクリーンエネルギーを提供していることを謳っているから、だと思う。「なんかよく知らんうちに電力会社が変わってるな。なんでだ。でも、なんか電力料金安くなってるし、どうやらクリーンな電力を買っているらしい。じゃ、まぁいいか」となるのは想像に難くない。

 

ここまで読むと「CCAってすげーいいじゃん」「電力会社とかもういらんな」と思われがちだが、話はそう単純でもないということを別の記事で書いていきたい。

 

※PG&EのCCA関連ページ

www.pge.com