energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

米国バージニア州 2050年までに100%の電力をクリーン電源由来へ

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米国北東部の州であるバージニア州が、クリーン経済法(Clean Economy Act)と呼ばれる州法を上下両院で可決したことをもって、2050年までに州内のすべての電力を非化石燃料由来のクリーン電力とすることを義務付けることとなった。

 

同州法は、州内の電力会社であるDominion Virginia(州内最大の電力会社)とAppalachian Power Co.の両社に対し、①2030年までに州内で提供する電力の30%以上を再生可能エネルギー由来とすること、そして、②2045/50年までに州内の化石燃料由来の発電所を全て閉鎖することを義務付けるもの(Dominionは2045年まで、Appalachianは2050年まで)。

 

現在、Dominion Virginiaの電源構成の内、再生可能エネルギーが占める割合は約5%程度なので(水力とバイオマスが中心)、今後は陸上・洋上風力や太陽光などの開発を大掛かりに進めることが不可欠となる。元々、バージニア州再生可能エネルギー導入目標は2025年までに15%だったので、今回の州法は従来の目標から大幅に踏み込んだものであることが分かる。

 

このように、天候次第で発電量が変動する再生可能エネルギーを増やすことに伴い、電力系統の安定を保つため、同時に2035年までに3.1GWの蓄電システムの導入も義務付けられた(Dominionが2.7GW、Appalachianが0.4GW)。これは全米のみならず、世界で見てもかなりの規模感を持った蓄電システムの導入義務だと思う。

 

このニュースで興味深いのは、地元最大の電力会社であるDominionの猛烈な反対を押し切って州法が成立している点(厳密にいえばまだNortham州知事の署名が必要となるが、同州知事はこの州法を強力に後押ししているので署名しない可能性はほぼない)である。

 

本州法はDominionらの保有している既存石炭・ガス火力発電所を想定よりも早く退役させることを義務付けるものである上、一部ではあるものの地元電力会社以外の外部資本の参入を可能にする(例えば、16GW相当の陸上風力・太陽光の発電事業に35%まで外部資本が出資できるようにする(但し、残り65%はDominionが出資))内容であり、自社の既存資産の価値が毀損することに加え、地域独占が(ごく一部ではあるものの)和らぐことを嫌ったDominionらが猛烈に反対していたのだ。

 

本州法を後押ししていた政治団体などは「本州法は、Dominionが反対したにも関わらず成立する過去10年で初めての州法だ」と述べているが、これは事実だろう。それでも賛成多数でバージニアの上院・下院ともに本州法を可決したあたりに再生可能エネルギーへのニーズの高まり、並びに価格競争力の高まりが感じられる。

 

ハワイ州カリフォルニア州など、再生可能エネルギー導入の動きを常々牽引してきたわけではない州でもこうした動きが出てきたことにも意義があると思われる。米国の政治が動く今年、再生可能エネルギー導入に向けた政治的な動きがどのように進むのか注視したい。

 

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