energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

中規模太陽光・風力向け固定買取(FIT)終了へ

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経済産業省中・大規模の太陽光・風力発電向けの固定買取価格(FIT)制度を近く終了する見通しのようだ。

 

記事を読む限りでは50~100kWh以下の小規模の商業・産業施設や家庭向けの太陽光発電に対するFITは継続する見込みだが、大半の太陽光や風力発電に対するFITは(ようやく)終了するようだ。

 

2019年度でFITに要するコストは既に3.6兆円、そのうち2.4兆円は電気料金の「再生可能エネルギー賦課金」という形で否応なしで最終消費者に転嫁されている(差額の1.2超円は一体だれが負担しているのだろう?電力会社?)。

 

東日本大震災に端を発する福島原発事故を受けた急激な潮流を受けていたという当時の背景を考えると若干同情の余地がないでもないが、世界的に笑いものになるような超高水準のFITを設定したことで国民負担を必要以上の水準に押し上げた経産省の罪は重い

 

ようやくまともな市場原理のもとでの再生可能エネルギー開発が進み、これによって国民による再生可能エネルギーに対する本質的な支持が広がる可能性も高まることを期待する。

 

ただし、日本はそもそも風力や太陽光などの再生可能エネルギー開発には全く適していない国であることはよく理解しておく必要がある。

 

そもそも国土面積が決して大きくない日本では、陸上風力や太陽光に適した土地があまりない。また、太陽光についていえば日照が良くない。

 

アメリカのカリフォルニア州では、屋根置きの太陽光発電を導入すると、1kWあたりざっくり1,800~1,900kWh程度の年間発電量が期待できるが、日本の場合はざっくり1,100~1,200kWh程度だと思われる。

 

発電容量当たりの発電量が2/3程度なので、仮に同じコストをかけて同じ規模の太陽光発電を導入すると、発電量当たりのコストは日本の方がカリフォルニアよりも1.5倍程度高くなるというざっくり計算である。

 

これに加え、現在アメリカでは太陽光発電に対する投資税額控除(Investment Tax Credit、ITC)が30%適用されているので、ざっくり太陽光発電の導入コストの30%を税額控除という形で回収できる。

 

こうした施策をとらず、再生可能エネルギーを国のベースロード電源にまで押し上げようと考えるのは楽観的にもほどがあろう。

 

真に再生可能エネルギーの普及を推進したいと考えるのであれば、市場原理を最大限発揮させつつも、化石燃料由来の電力に対して再生可能エネルギーがもつ競争力を高める施策を組み合わせることが必須である。

 

経産省が策定中の具体制度の中ではこの点が適切に考慮されることを望む。

 

www.nikkei.com