energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

米国・卸売電力市場を多様な分散電源に開放

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米国で電力・エネルギー業界にとって“Game Changer”となりうる大きな動きがあった。

 

米国で連邦レベルの電力・エネルギー関連規制を司るFERC(Federal Energy Regulatory Commission)が多様な分散電源向けに卸売電力市場を開放する指令(Order 2222)を可決したのである。

 

米国では蓄電システム向けに卸売電力市場を開放する類似の指令(Order 841)が2018年に可決されており、系統運営機関等が具体的なルール策定・施行に取組んでいる最中。今回のOrder 2222はこの範囲を蓄電システムから太陽光やEVインフラに拡大するものである。

 

Order 2222に基づく具体的なルール策定は今後米国内の各市場で行われるため、未だインパクトの全容は分からないものの、事業者にとっては以下のような変化があると思われる:

 

  1. 分散電源の統合制御機能の有無及び制御対象量の重要性の高まり
  2. 卸売電力市場でのトレーディング機能の重要性が高まり

 

どういうことか。

 

例えば、これまでBehind the Meter(BTM)での分散電源サービスは、基本的には「顧客からのサービス料」が唯一の収入減であったところ、今後は「顧客からのサービス料」と「卸売電力市場からの収入」の二つが収入源になると思われる。

 

従い、「卸売電力市場からの収入」を得られるほど、競争力のある「顧客からのサービス料」を提示できる形となり、上記二点の優位性がBTMをはじめとした顧客向けサービス市場での競争力を左右するようになると想像される。

 

言い換えると、これまでは様々なプレイヤーが独自の戦略を追求して分散電源分野での事業展開する余地が十分があり、分散電源分野の参入障壁の低さから、実際に米国では有象無象の中小デベロッパーが活動している(BTM太陽光の場合は、太陽光向けの連邦税務メリット(ITC)があるおかげで、他先進国よりある程度は中小デベロッパーの参入が防がれている面があると思われるが)。

 

しかし、仮にOrder 2222が本格的に市場制度に反映されるようになると、規模感と機能を併せ持つ重量級プレイヤーが分散電源分野においても今以上に優位性を発揮しやすくなると思われる。

 

一方、そもそも多様な分散電源を電力卸売市場に統合することは実務的な難度が高いと思われ(実際、系統運用機関等はOrder 2222に反対していたものの押し切られた格好)、どのような市場設計・運営がされるのかは要注視。今後の展開を見守りたい。

 

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