energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

Facebook テキサス州の379MW太陽光発電所に直接投資

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Facebookアメリカ・テキサス州のProspero太陽光発電所(379MW)にタックス・エクイティとして直接投資をすることを発表した。

 

Facebookが再エネへの取組に積極的であることはよく知られているが、通常、企業は再エネ電源から生み出される電力・再エネ証書(Renewable Energy Credit、REC)を購入することのが一般的である。

 

Facebookは2018年に全消費電力の75%を再エネ電源から調達したことを発表しているが、これも再エネ電源からの電力・RECの購入によるものである。

 

ところが、今回Facebookが発表したのは太陽光発電所への直接投資(タックス・エクイティとはいえ)であり、これまでの一般的な取組よりも一歩踏み込んだものであると言える。

 

Prospero太陽光発電所から発電された電力は12年間の買電契約(Power Purchase Agreement、PPA)を通じてShell Energy North Americaが購入(価格は非公表)、同じく生み出されたRECはShell Energy North AmericaとFacebookが共同で購入するとのこと。

 

Prospero太陽光発電所の開発は、Longroad Energy Partners(LEP)なるデベロッパーが行ったとのことで、LEPが今後も株主として案件に残るのか、それとも外部の投資家を招聘するのかは不明。

 

PPA価格は非公表だが、記事内にもあるように、最近テキサス州他で見られている事例から恐らくUS$0.03/kWhは下回る水準であると推測される。というか、PPAのオフテイカーがFacebookとShellというピカピカの高与信先であることや、400MW近い大規模な発電所であること、テキサスには開発中の太陽光発電案件が雨後の筍のように多数あることなどを考えると、実際にはそれよりも随分低いPPA価格なのではないかと想像する。

 

2019年内に着工することで30%のITC(投資税額控除)を活用する前提だとしても、同PPAに基づく12年間の売電・REC収入だけで十分な利回りを確保できるとは思えない。昨今の太陽光発電システムは25-30年程度は十分に発電する(もちろん経年劣化はするものの)と言われているので、やはりProspero案件においてもPPA失効後の収入が相応に見込まれているものと思われる。

 

オンサイトの太陽光発電であれば、顧客は自分の施設に既に太陽光発電システムがあるわけであり、顧客が「まだ普通に発電している訳だし、わざわざ撤去してもらうくらいであればPPAを更新しようか」と考える蓋然性はそれなりに高いと思われる。

 

一方、本件のように電力卸売市場を介したオフサイトの太陽光の発電所との契約の場合、顧客(この場合、ShellとFacebook)はProspero太陽光発電所と契約を更新するメリットがなく、PPA更新の蓋然性はがくっと落ちると思われる。

 

従い、PPA失効後の収入としてはテキサスの電力卸売市場(ERCOT)に売電することを想定していると思われる。問題は、これだけ太陽光発電の開発が相次いでいる中、10年以上先の日中の卸売市場の料金がどうなっているか、という点である。個人的にはやはり暴落しているのではないかと思うし、それをアテにした太陽光発電案件の開発はリスクが高すぎると感じるが、これだけ開発中の案件がある中ではそうもいっていられないというデベロッパー心理も分かる。

 

この業界で適性リターンを求めるには難しい時代だと感じるが、これで再エネが増え、地球環境の一助になるのであればそれはそれでいいのかな、とも思う。雑感以上。

 

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