energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

イーロン・マスク vs 証券取引委員会

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Teslaのイーロン・マスクCEOと証券取引委員会(SEC)のごたごたが続いている。

 

きっかけとなったのは、先月マスクCEOが投稿した以下のツイート:

 

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要するに「Teslaを非上場化することを検討しており、そのための資金も確保したぜ」という内容だが、このツイートをしたくなるマスクCEOの気持ちは個人的によく分かる。

 

Teslaは、Model 3の量産ペースやTesla自体の収益化見通し等について市場から厳しい指摘を受けており、結果として株価もさえない。四半期毎に決算内容を報告し、都度生産や販売の状況等について懇切丁寧な説明が求められることは、中長期の事業を通じて世の中に大きなインパクトを与えようとするマスクCEOにとっては大きな負担であり、ストレスだろう。

 

低コストの資本へのアクセスを可能とし、かつ、市場からの注目を集めることでひいては本業であるEVの販売増に繋げられる等、Teslaにとっての上場のメリットは明白だが、これらの負担を考えると「いっそ非上場化しちまった方がいいんじゃねーの」とマスクCEOが考えるのも無理はない。

 

しかし、このツイートは軽率だった。

 

アメリカの証券取引委員会(SEC)がマスクCEOが、ツイートを通じて市場に誤った情報を流し、株価を不当に操作したとして、マスクCEOを告発したのだ。このSECの告発は、主に二つの理由から妥当なものと思われる。

 

第一に、そもそもマスクCEOのツイート内容が事実ではなかったと思われること。実際にはマスクCEOはTesla非上場化のための資金を確保できてはいなかった。仮にTeslaが非上場化するとなった場合の資金の出し手と目されていたのはサウジアラビアの年金基金だったが、その年金基金は9月にTeslaの競合であるEVメーカーLucid社に1,000憶円以上を出資することを発表しており、Teslaとの間で「資金を確保した」とまで言えるレベルで話が進んでいたとは考えづらい。

 

www.reuters.com

 

第二に、マスクCEOのツイートによってTeslaの株価は実際に(一時的に)上がったこと。マスクCEOのツイートでは、非上場化に際して一株当たり$420で株式が買い取られることが示唆されており、それを期待した市場から買いが入り、結果としてTeslaの株価はこの日に上昇した。

 

一時はSECとの徹底抗戦を主張していたマスクCEOであったが、その後とSECとの和解を発表。マスクCEOはTeslaの会長から3年間退くのみならず、マスクCEOとTeslaがSECに対してそれぞれ$20mil(合計$40mi=約40憶円)を支払うことの見返りに、SECはマスクCEOに対する告訴を取り下げると共に、マスクCEOのツイートが何らかの法律・規制に違反していたかという点を追求しないこととなった。

 

これにて両者の闘争は一件落着したかに思われたが、マスクCEOの怒りは収まっていない様子。SECとの発表後にもう一声、皮肉いっぱいのツイートをかましている。

 

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「Shortseller Enrichment Comission(SECの本当の名称はSecurities & Exchange Comission)は素晴らしい仕事をした。名称変更もいけてるぜ!」

 

これを受けてTeslaの株式は再度下落。再びの挑発的なツイートの対してTeslaの株主から多くの批判が集まったが、それに対してマスクCEOは以下のように応戦:

 

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「先のツイートに誤字があったことをお詫びしたい。あれは許されることではなかった。SECは先ほどのツイートに対して怒らないだろう。だってShortseller Enrichmentは彼らがやっていることそのものだから」

 

ツイートが40憶円の罰金に繋がろうとも、どこまでも自己流を突き通すマスクCEOである。