カリフォルニア州電力会社 世界最大の蓄電システムでガス火力発電を代替へ
カリフォルニア州北部の電力会社PG&Eは、カリフォルニア州公共ユーティリティ委員会(CPUC)による合計567.5MW/2,270MWhの蓄電システムの導入に関する申請を許可した。
今回許可を取得した蓄電システムは以下の4つとのこと。
- 300MW/1,200MWh(所有者:Vistra Energy子会社、Dynergy Marketing & Trade)
- 182.5MW/730MW(所有者:PG&E)
- 75MW/300MWh(所有者:Hummingbird Energy Storage(EsVolta子会社))
- 10MW/40MWh(所有者:mNOC AERS(Micronoc子会社))
まず、その圧倒的な規模感について触れないわけにはいかないだろう。これまでの世界最大の蓄電システムはTeslaが南オーストラリアで導入した100MW/129MWhのものだと思う。
再生可能エネルギー導入量増による電力系統の不安定化に困っていた現地電力会社に対して、Elon Muskが「うちなら速攻で超特大蓄電池を手配してあなたの問題なんか楽勝で解決しちゃうよ」と啖呵を切って、実際に手際よくそれを履行した(と少なくとも報じられている)のは記憶に新しいところ。
だが、今回のPG&Eが許可した最大の案件はなんと300MW/1,200MWh。MWで見ると南オーストラリアの3倍、MWhで見ると10倍近い。月並みな感想だが、とにかく大きい。これはもう「お試し」の域を超えており、電力系統の構成要素の一つとして蓄電システムが「実用化」される(少なくともPG&Eはそう思っている)ということだろう。
次に、注目したいのは、この蓄電システムが実際に導入された場合、Calpineが所有する3つのガス火力発電所が不要になると見られている点。これらのガス火力発電所はいわゆるピーカーと呼ばれ、電力需要のピーク時のみに発電するものであるが、これを蓄電システムが代替するというのだ。
このコンセプト自体は以前からあったが、コスト面の理由から実用化に至っていなかった。これが、①蓄電システムのコスト低下、②再生可能エネルギー(カリフォルニアであれば主に太陽光)の発電コスト低下、により、実用化に向かっているというのはなんとも先進的である。これは本当にワークするのであれば、現存するピーカーガス火力発電所(ベースロードは除く)の将来は厳しい。
最後に、個人的に危機感を覚えるのは、この蓄電システムの所有者のことをほとんど知らない点である。PG&Eは分かるとして、残りの3システムの所有者は恥ずかしながら初耳に近い。AESやENGIE系列の会社がいてもいい感じもするのだが。あまりに先進的かつ大規模すぎて大手プレイヤーは踏み込めなかったのか、それとも何か全く別の理由があるのか、少し探ってみたいと思う。