energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

太陽光パネルは「まじ邪魔」か?

(毎度のごとく)堀江さんが投稿したツイートが話題を呼んでいる。

 

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太陽光発電の景観問題について、パネルが景観をぶち壊していてまじ邪魔だと、いつものように非常にストレートな物言いで言及している。

 

全ての発電手段はそれなりの景観問題を伴うので、太陽光発電のことだけを切り出して批判するのは必ずしもフェアではないと思いつつ、言っていることはよく分かる。

 

景観の感覚は非常に主観的であることは百も承知の上だが、太陽光発電の景観について個人的に感じるところをまとめるとこんな感じだろうか。

 

1.メガソーラー導入のための森林伐採・山岳部開拓等は×

  • 太陽光発電はコストメリットを伴う発電手段になってきているが、環境負荷を抑えた発電手段であることもメリットの一つであるはず。とすると、森林伐採や山岳部開拓などは矛盾満載の手法であり、その矛盾を孕んだ太陽光発電の景観も美しいものにはなりにくく、個人的にも好きになれない。
  • そもそも日本は平坦で空いている土地が少ない土地柄であり、メガソーラーには向いていない環境であると言える。一方、アメリカや中東など、他に用途があるとは思えない辺鄙なエリアに、平坦で何もない土地があり余っていて、燦燦と強烈な日光が降り注いでいるような国もあるので、一概にメガソーラーが景観に大きな問題を与えるとは限らないと思う。
  • 日本におけるメガソーラーによる森林伐採・山岳部開拓は多分に人災である。森林伐採や山岳部開拓などの大規模な整地作業を伴う太陽光発電の導入工事は高コストとなるため、まともな市場原理が働いている限りにおいて実現しないのが通常である。しかし、かつての日本で導入された常軌を逸した水準の固定買取価格(FIT)の下では適切な市場原理が働かず、無茶な工事を伴う太陽光発電設備の導入も進んでしまった。

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2.住宅の屋根置き太陽光は△

  • 斜め屋根の住宅に設置された太陽光パネルも個人的にどうしても好きになれない。多大な環境負荷を伴っている訳でもないのでみょうちくりんな場所に置かれたメガソーラーよりははるかに良いのだが、せっかくの住宅デザインの全体感を損なっている感が否めない。

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  • この点、デザインやブランディングに対して太陽光業界の中でも有数のこだわりを持っているTeslaも認識しているようで、Solar Roofと称して太陽光パネルと一体化された屋根を開発中である。カリフォルニア州では2020年以降に新設される一般住宅の屋根には太陽光パネルを導入することを義務付けることを決定しており、一定の需要が見込まれることから真剣に開発が進められると思われる。

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3.大規模施設の屋根置き太陽光や駐車場のキャノピー型太陽光は〇

  • 一方、工場や商業施設といった大規模施設の屋根置きの太陽光は悪くない。そもそも中々視界に入らないし、仮に目に入ったとしても一定の規模の太陽光パネルが整然と並べられているケースが多い。さらに、そうした施設の屋根は大概他の用途もないので、それであれば太陽光パネルを置くのは合理的だと思う(写真はイメージ)。

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  • 同じように、駐車場のキャノピー型の太陽光も合理的だと思う。単純に駐車場の屋根として、車内が過度に暑くなることや雨風に晒されることを一定程度防ぐことができる上、そもそも用途がなかったスペースを活用して太陽光発電を行うのだから、これまた合理的である。建設コストが高いのが玉に瑕であるが、アメリカなどではかなり普及が進んできている。

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太陽光は環境負荷とコストを抑えつつ発電を行うことができる非常に有望な発電手段だと思っているが、もちろん他の電源と同様に欠点は数多ある。

 

景観問題もその一つであろうが、デザインや設置場所の工夫、見る側の考え方の変化等を通じて、徐々に社会に浸透していくことを期待したい。

 

太陽光の一つの大きな長所は電力の消費地の近くに導入できること。人々が太陽光発電をポジティブに捉えられれば、環境的・経済的価値の高い電源として社会を支えてくれると思う(将来的にはペロブスカイト太陽電池にも期待している)。

ソフトバンク 世界最大の太陽光発電案件の開発中断か

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ソフトバンクサウジアラビア公共投資ファンド(PIF)が取り組んでいた世界最大級とされる太陽光発電案件の開発が中断されたとWall Street Journal等が報道した。

 

ソフトバンクPIFは2018年3月にMOU(覚書)を締結し、総額20兆円をかけて世界最大となる200GW級の太陽光発電案件の開発を2030年までに進めることに合意。

 

ソフトバンク孫正義社長は、同プロジェクトがサウジアラビアの石油依存を低減すると共に、最大10万人の雇用をもたらし、電力コストを400億ドル圧縮可能と述べていた。

 

それ以降、両者は初期段階のリサーチなどに取組んでいたものの、サウジアラビア王国内の要人の合意が得られなかったことや、理想と現実の乖離に直面したことで、検討が棚上げされたとの報道だ。

 

これに対し、ソフトバンクPIFはそれぞれ声明を発表し、同案件の開発を継続していることを強調しており、両者の関係が継続していることをうまくアピールできているが、「この規模と複雑さを備えるプロジェクトとしては、期待に沿った進展が続いている(ソフトバンク)」と何とも微妙なトーンのコメントに止まっている。

 

 

本件の真相は不明だが、サウジアラビアにおいて2030年までに200GWの太陽光発電を導入するのは現実的でないだろう。

 

現在のサウジアラビアにおける発電容量は66GW(2016年時点、出典: EIA)、ざっくり言うと、その40%が石油火力、60%がガス火力の発電所から成る。

 

サウジアラビアは、経済成長に伴い電力需要が増大することから、2032年には120GW程度まで発電容量を引き上げる計画を発表しているが、15年程度で発電設備を倍増させる計画の実現性には疑問符が付く。

 

石油火力もガス火力も、どちらも24時間稼働可能な電源であることから、太陽光と発電容量を単純比較することは不適当であるが、それでも2030年までに200GWの太陽光を導入することはかなり難度が高い。

 

仮に200GWの太陽光を導入したとするとサウジアラビアはその電力需要のほぼすべてを太陽光により発電することとなると思われるが、ご存知の通り太陽光は日中しか発電しないため、日中に発電された余剰電力をどのように扱うか、という人間が未だ正解を導けていない問いに直面せざるを得ない。

 

蓄電池に貯めるにしてもあまりに莫大な量の蓄電池が必要となるし、夜間はガス火力・石油火力で賄うとするならば日中の太陽光発電の無駄が大きすぎる。

 

ということで200GWの太陽光が2030年までにサウジアラビアで開発されることはないと個人的に思うが、ソフトバンクはそれでいいのだろう。

 

というのも、ソフトバンクは第二ビジョンファンドにPIFから5兆円を調達することを発表したばかり。第一ビジョンファンドに対する出資と併せるとPIFの拠出額は約10超円と破壊的なインパクトである。

 

太陽光がどの程度実現するかどうかはさておき、様々な側面からサウジアラビアの政府高官との関係を構築・強化し、道中多少の取りこぼしはあったとしても、実務上の恩恵を受けるという孫正義率いるソフトバンクの経営スタイル・手腕は日本企業においては傑出したレベルだと思う(それを支える実務スタッフは大変そうだが。。。)。

 

中東の盟主たるサウジアラビアからどれほどの果実を日本に引っ張ってこれるか、ソフトバンクの挑戦を応援したい。

 

www.greentechmedia.com

 

IEA 世界の太陽光発電導入ペースの鈍化を予想

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IEA(International Energy Agency)が発表したRenewables 2018というレポートの中で太陽光発電の導入ペースが鈍化すると予想した。

 

こうした世界レベルでの予想は余りにマクロ過ぎて大して意味があるとは思えないが、①中国の太陽光政策変更(固定買取価格制度(FIT)撤廃)のインパクトが大きいこと、②分散型太陽光発電(上記チャート内の濃いオレンジ)が太陽光発電の成長を牽引することなどは正しいメッセージだと思う。

 

尚、個人的に興味深かったのは、太陽光導入量に関する過去のIEA予想と実績値の乖離を示した以下のチャート。

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色とりどりの線が過去のIEAの太陽光導入量の予想であり、黒い実線が過去の実績値を示している。

 

IEAは再生可能エネルギーの導入予想に関してコンサバ気味であることは周知の事実であるが(反対にBloomberg New Energy Financeはアグレッシブ気味)、これを可視化しているのは興味深い。

 

もはやこうした大手機関による業界トレンドに関するマクロ予想の類には意味がなく、重要なのは経験と常識、肌感覚に裏打ちされた個人・チームの信念なのだとの思いを強くする。

 

pv-magazine-usa.com

 

ぐだぐだ言うならTeslaの株なんか買うな

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Teslaのイーロン・マスクCEOが批判に晒されている。これ自体は決して珍しいことではないが、今回マスクCEOを批判しているのは他ならぬTeslaの株主である。

 

マスクCEOがツイートを通じてTeslaの株価を不当に操作したとして公正取引委員会(SEC)から告訴され、その後両者が和解に合意。

 

しかし、腹の虫がおさまらないマスクCEOは和解発表後にSECを痛烈に皮肉るツイートを投下。

 

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これによって、恐らくはSECらとの更なる問題に巻き込まれることに対する懸念が高まりTeslaの株価は下落。これに不満を持ったTesla株主がマスクCEOをツイッター上で批判、マスクCEOとの応酬を繰り広げている。

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一部の投資家が「あなたの軽率なツイートのせいで私たちTeslaの株主が被害を被っているじゃないか!」と主張するのに対し、マスクCEOは「落ち着いてくれ。本当の長期投資家ならば大丈夫だ。」と意に介さず。

 

一般論としては、経営者は企業価値の最大化に尽くすべきなのであるから、株価の下落(企業価値の低下)に繋がるツイートを繰り返しちゃうなんて言語道断だろう。

 

そういう意味では投資家の言う通りであるし、上場企業のCEOとしても、一人の大人としても、今回のマスクCEOの立ち居振る舞いは大して褒められたものではないと思うが、それ以上にこう思う。

 

「これくらいでぐだぐだ言うならTeslaの株なんか買うな」

 

まず、マスクCEOが品行方正な行動・言動に徹する人物ではないことなど、火を見るよりも明らかである。率直、アグレッシブ、競争的、好戦的というのが広く一般に認識されているマスクCEOの人物像であり、これがゆえに彼の群を抜く構想力、リーダーシップ、行動力がもたらされている。

 

今日のTeslaがあるのも、これからのTeslaの成長が期待されるのも、それはマスクCEOの功績によるところが大であり、これは市場で広く認識されている常識であると言っていいだろう。

 

これを可能にしているマスクCEOのキャラクターについて、今さらなんで不満を持っているのか、理解に苦しむ。

 

そして、さらに言えば、Teslaに経済的なリターンを期待して投資するのは投資家としてどうなの?というのが個人的に率直な感覚である(もちろん投資哲学は人それぞれなので本格的に口を挟むつもりもないが)。

 

そもそも自動車産業は、R&D(研究開発)や宣伝広告、ブランディングに継続的かつ多額の資金を振り向ける必要があるため、株主還元に回す資金がどうしても限られてしまう性質があるため、長期的な投資対象としては不向きだと言われており、その通りだと思う。

 

(これはさすがにマスクCEOは言えないと思うが)Teslaに長期の経済的なリターンを求めて投資するのは投資家のセンス的にどうなんだろうかと思う。

 

Teslaに投資をする理由としてありえると思うのは、①短期的な経済的なリターンを求めるケース(短期的な株価の上昇を狙う)、②Teslaの長期的なビジョンを応援したいケース(経済的リターンは重視せず)のどちらかではないか。

 

マスクCEOのTeslaに対するコミットは本物だと思う。だが、彼の言動も経営スタイルも変わらないだろう。アグレッシブな計画をぶち上げるだろうし、新しいモデルの生産に手こずることもあるだろう、また、軽率なツイートだってないとも限らない。結果として、株価は短期的に上下することがあるだろう。

 

でも、Teslaという企業が、より多くの人々にEVを届け、自動運転やシェアリングを通じて人々の移動に変革を起こす大きなチャンスを持っていると思う。とっても夢のある企業であるし、これがうまくいけば、長ーい目で見れば企業価値は上がっていくかもしれない(でもこれをあてにすべきではない)。

 

これを信じられる人にとってTeslaは投資するに値する面白い企業だし、いまいちこれを信じ切れずぐだぐだ言うならTeslaの株なんか買うべきじゃないと思う。

イーロン・マスク vs 証券取引委員会

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Teslaのイーロン・マスクCEOと証券取引委員会(SEC)のごたごたが続いている。

 

きっかけとなったのは、先月マスクCEOが投稿した以下のツイート:

 

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要するに「Teslaを非上場化することを検討しており、そのための資金も確保したぜ」という内容だが、このツイートをしたくなるマスクCEOの気持ちは個人的によく分かる。

 

Teslaは、Model 3の量産ペースやTesla自体の収益化見通し等について市場から厳しい指摘を受けており、結果として株価もさえない。四半期毎に決算内容を報告し、都度生産や販売の状況等について懇切丁寧な説明が求められることは、中長期の事業を通じて世の中に大きなインパクトを与えようとするマスクCEOにとっては大きな負担であり、ストレスだろう。

 

低コストの資本へのアクセスを可能とし、かつ、市場からの注目を集めることでひいては本業であるEVの販売増に繋げられる等、Teslaにとっての上場のメリットは明白だが、これらの負担を考えると「いっそ非上場化しちまった方がいいんじゃねーの」とマスクCEOが考えるのも無理はない。

 

しかし、このツイートは軽率だった。

 

アメリカの証券取引委員会(SEC)がマスクCEOが、ツイートを通じて市場に誤った情報を流し、株価を不当に操作したとして、マスクCEOを告発したのだ。このSECの告発は、主に二つの理由から妥当なものと思われる。

 

第一に、そもそもマスクCEOのツイート内容が事実ではなかったと思われること。実際にはマスクCEOはTesla非上場化のための資金を確保できてはいなかった。仮にTeslaが非上場化するとなった場合の資金の出し手と目されていたのはサウジアラビアの年金基金だったが、その年金基金は9月にTeslaの競合であるEVメーカーLucid社に1,000憶円以上を出資することを発表しており、Teslaとの間で「資金を確保した」とまで言えるレベルで話が進んでいたとは考えづらい。

 

www.reuters.com

 

第二に、マスクCEOのツイートによってTeslaの株価は実際に(一時的に)上がったこと。マスクCEOのツイートでは、非上場化に際して一株当たり$420で株式が買い取られることが示唆されており、それを期待した市場から買いが入り、結果としてTeslaの株価はこの日に上昇した。

 

一時はSECとの徹底抗戦を主張していたマスクCEOであったが、その後とSECとの和解を発表。マスクCEOはTeslaの会長から3年間退くのみならず、マスクCEOとTeslaがSECに対してそれぞれ$20mil(合計$40mi=約40憶円)を支払うことの見返りに、SECはマスクCEOに対する告訴を取り下げると共に、マスクCEOのツイートが何らかの法律・規制に違反していたかという点を追求しないこととなった。

 

これにて両者の闘争は一件落着したかに思われたが、マスクCEOの怒りは収まっていない様子。SECとの発表後にもう一声、皮肉いっぱいのツイートをかましている。

 

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「Shortseller Enrichment Comission(SECの本当の名称はSecurities & Exchange Comission)は素晴らしい仕事をした。名称変更もいけてるぜ!」

 

これを受けてTeslaの株式は再度下落。再びの挑発的なツイートの対してTeslaの株主から多くの批判が集まったが、それに対してマスクCEOは以下のように応戦:

 

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「先のツイートに誤字があったことをお詫びしたい。あれは許されることではなかった。SECは先ほどのツイートに対して怒らないだろう。だってShortseller Enrichmentは彼らがやっていることそのものだから」

 

ツイートが40憶円の罰金に繋がろうとも、どこまでも自己流を突き通すマスクCEOである。

アメリカで広がる"Community Choice Aggregation"とは?

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皆さんはCommunity Choice Aggregationという言葉を聞いたことがあるだろうか?

 

恥ずかしながら、私はつい最近まで聞いたことがある気がしても、実態としては全く理解していなかったが、こいつの動きが最近無視できないレベルにまで拡大してきている気がするので少し調べていきたいと思う。

 

Community Choice Aggregation(CCA)とは、「コミュニティが独自に電力調達の選択肢を持つこと」である。こう言われても「なんのこっちゃ?」と思われると思うので(書いている自分でもそう思う)、もう少し丁寧に見ていきたい。

 

多くの市場において、電力というのは誰から買えるかが制限されていることが多い。日本では2016年4月から家庭向けの電力小売が自由化され、私たちは誰から電力を買うかを選択することができるようになったが、これまでは東京都民であれば東京電力大阪府民であれば関西電力といった具合に、その地域を管轄していた電力会社からしか電力を買うことができなかった。

 

例えば、アメリカのカリフォルニア州の多くのエリアにおいては、原則として地元の電力会社からしか電力を購入できないこととなっている(厳密に言えば、Direct Access等という例外措置があるがここでは割愛する)。

 

しかし、そのような状況において、一般の消費者がこう言うのだ。「私たちは電力調達の選択肢を制限されている」「本当はもっと低価格で電力を買うことができるのではないか」「本当はもっとクリーンな電力を使いたいのに、これでは電力会社の提供する電気以上にクリーンな電力が買えないではないか」と(本心からこんなことを言う人がどれほどいるのかは分からないが)。

 

そこで編み出された一つの案がCCAである(と、少なくとも私は理解している)。上述の通り、CCAは「コミュニティが電力調達の選択肢を持つこと」である。市や群といったコミュニティレベルでまとまり、地元の電力会社が提供するメニューとは異なる電力調達の選択肢を生み出すのだ。

 

例えば、北カリフォルニアにPeninsula Clean Energy(PCE)というCCAがある。PCEが何をしているかというと、特定地域(具体的にはPCEの場合はSan Mateo群)の消費者に対して、再生可能エネルギーが50%または100%含まれた電力を提供しているのだ。

 

ここで強烈なのは、PCEの顧客獲得方法だ。PCEに限らず、多くのCCAは顧客を獲得するに当たって「Opt Out方式」を採用している。これはどういうことかというと、消費者はある日、「今度から地元の電力会社(PG&E)に代わってPCEがあなたに電力を提供しますよ」という通知を受け、それを拒否(Opt Out)しない限りは自動的にPCEの顧客になる、ということである。

 

一見するとかなり乱暴な顧客獲得方法であり、ほぼ知らぬ間に電力の調達先を切り替えられた消費者からクレームが続出しそうにも思えるが、どうも今のところカリフォルニアではそうなっていないらしい。それどころか、このCCAは非常に好評を博しているというのだ。

 

2018年9月時点でカリフォルニア州全体で19のCCAが設立されており、260万の消費者に対して電力を提供しているとのこと。CCAの活動が最も活発なのは北カリフォルニアを管轄する電力会社であるPG&E管内であり、同管内の540万顧客の内、実に210万顧客がCCAによる電力提供を受けているというのだ。

 

なぜCCAに対してクレームが続出しないかというと、恐らく(多くの場合において)①CCAの方が電力会社よりも電力料金が安いから、②CCAが一定割合のクリーンエネルギーを提供していることを謳っているから、だと思う。「なんかよく知らんうちに電力会社が変わってるな。なんでだ。でも、なんか電力料金安くなってるし、どうやらクリーンな電力を買っているらしい。じゃ、まぁいいか」となるのは想像に難くない。

 

ここまで読むと「CCAってすげーいいじゃん」「電力会社とかもういらんな」と思われがちだが、話はそう単純でもないということを別の記事で書いていきたい。

 

※PG&EのCCA関連ページ

www.pge.com

 

カリフォルニア州 電力の100%非化石燃料由来化を義務付ける州法成立

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先日、カリフォルニア州議会を通過していた2045年までに全電力を非化石燃料由来とすることを義務付ける法案(SB100)が、9月10日にブラウン知事の署名が完了したことをもって正式に成立した(SGIP延長を定めるSB700はまだ署名待ち)。

 

親・再生可能エネルギー派のブラウン知事がSB100に署名することは大方の想定通りだったが、業界を驚かせたのはSB100への署名と同時に、ブラウン知事が発出した行政命令(Executive Order)。

 

ブラウン知事は、カリフォルニア州において、電力セクターが州全体のCO2排出量の16%しか占めていないことから、持続可能な社会の構築のためには電力セクターのみでの取組みでは不十分であると指摘。

 

そのため、電力セクターのみならず、エネルギー・交通・農業等の各セクターで2045年までにCO2排出量をネットゼロとするべく努力することを求める行政命令(Executive Order)を発出したもの。

 

どうやら、Executive Orderは州法と異なり目標の達成義務を課すものではなく、努力義務を課すのみである模様だが、関連機関等でCO2排出量削減に向けた具体的な動きが取られることは間違いなく、CO2排出量削減に向けたカリフォルニア州の本気の取組みの先行きが注目される。

 

本当にカリフォルニア州以外のマーケットにおいてCO2排出量削減の動きがこのペースで進むのかは分からないが、このトレンド自体が広がりを見せ、日本を含めた各国が独自の方法で追随する可能性は高いと思う。

 

一つ思うのは、こうしたトレンドはリードしてこそ意味があるということ。First Moverとしてどーんとインパクトのあるメッセージを打ち出すことができれば、それだけ注目を集めるし、政治的なアピールになる。

 

そればかりでなく、先行した取組みを進めた結果として様々な課題にもいち早く直面することとなり、その解決策を模索する必要が生じるため、その解決策を紡ぎだすプロセスを学ぼうとする人材や企業を集めることができる。地元企業・機関がその解決に関するノウハウを蓄積すれば、それを後発市場に輸出することもできる。

 

後発の方がリスクを抑えられる面はあるかとは思うものの、本当に普遍的なマクロトレンドに則った動きならば、先行して失敗したとしても十分な見返りがあるのではないかと思う。それに、二番煎じ、三番煎じでは面白くない。

 

www.greentechmedia.com