energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

ビル・ゲイツ「地球温暖化の”75%問題”」

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マイクロソフトの創業者であり、慈善事業に精力的に取組む億万長者の代表格としても知られるビル・ゲイツが、自身のウェブサイトgatesnotesで「地球温暖化の”75%問題”」と題する記事を投稿した。

 

温室効果ガスの排出源として多くの人が真っ先に思い浮かべるのは電力セクターであり、それはそれで正しいが、全体に占める割合は約25%に過ぎないことを紹介。

 

従い、太陽光や風力等のクリーンエネルギーの活用を進めるだけでは地球温暖化を招いている残りの75%の温室効果ガスは手付かずになる、と指摘。ビル・ゲイツの紹介している温室効果ガスの主要排出源は以下の通り:

 

  • 電力セクター(25%):太陽光や風力等のクリーンエネルギーの活用による進捗あるものの、更なるクリーンエネルギーの活用と電力系統の安定を両立させるためには更なるイノベーションが必要
  • 農業・畜産セクター(24%):牛の排出するメタンガスや焼き畑などの影響大
  • 製造セクター(21%):プラスチック、鉄、セメントなどの製造に際しては二酸化炭素等の温室効果ガスが副産物として付きまとうため、これらの生産量を減らす工夫が必要
  • 交通セクター(14%):自動車による排出量は交通セクター全体の約半分であり、EV化が進んでも問題は解決せず。飛行機、貨物船、トラック等の影響大
  • 建物セクター(6%):今後、世界レベルでの都市部への人口集中が進む中で問題が深刻化する見込み。2060年までに世界のビルの数は倍増すると言われており、これは40年間にわたってニューヨークシティを毎月新しく作っていくようなもの

※その他(10%):石油・ガス生産等

 

様々な計測・分類の仕方があると思うのでこれだけにとらわれるのは不適切だと思うが、個人的にびっくりさせられるポイントがいくつかあったので共有したい。

 

まず、農業・畜産セクターの存在感の大きさ。ほとんど電力セクターと同じ量の温室効果ガスを排出しており、その主要因は牛をはじめとした家畜が出すメタンガスだという。

 

仮に今日、世界中の牛が大脱走して独立国家を設立したならば、その国は温室効果ガスの排出量で世界第三位に躍り出るとのこと(第一位:中国、第二位:アメリカ、第四位(現・第三位)インド)で、これは恥ずかしながら個人的な想像をはるかに超えていた。

 

アメリカなどでは「植物由来の肉」が数年前から注目を集めており、ビーガンのみならず一般の人にまで一定程度の広がりを見せているが、これは個人の健康や動物の保護のみならず、このような家畜によるメタンガス排出を抑えることによる環境問題への取組さえも見据えている(人もいる)と聞いて驚いた。

 

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次に、従来型のガソリン車による温室効果ガスの排出量もイメージよりもずっと少ない。正確な比率は分からないが、ざっと全体の7%以下ということだろう。

 

これでは、仮に発電をすべて再生化のエネルギー由来にして、世界中の自動車をEV化したところで温室効果ガスの排出は30%程度しか減らないことになる。実際には人口増や都市化の進展等による自然増もあるだろうから、かなりインパクトは限定的とならざるを得ない。

 

「温暖化防止」とは言うは易し行うは難し。実に多面的・重層的な取組が不可欠な分野であることを再認識した次第である。

 

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