energytransition’s diary

急速に変化する電力・エネルギー業界での出来事について慎ましく発信するブログです。

温暖化を防ぐためにカルビの代わりにピートロと鶏肉を食べよう

以前、当ブログの「ビル・ゲイツ「地球温暖化の”75%問題”」 - energytransition’s diary」という記事でも紹介したが、世界の温室効果ガスの20%以上を排出しているのは農業・畜産セクターである。

 

当ブログでは、通常、電力・エネルギーセクターに関する出来事についてご紹介しているが、今日はこの農業・畜産セクターにスポットライトを当て、「我々の食生活が地球温暖化にどのような影響を与えているか?」を考えてみたい。

 

そこで、まずはこちらの表を見て頂きたい。以下は、食べ物の種類とCO2排出量の関係を表した図である。

 

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図の上の方にある食べ物は温室効果ガス排出量が多く、下にいくほど温室効果ガス排出量が少ないものとなる。

 

やや見づらいので、CO2排出量の多い食材トップ10を書き出すと以下の通りとなる(かっこ内は、その食品を1kg生産する毎に発生する温室効果ガスの量をCO2に換算したものである)。

 

1位:牛肉(食用)(60kg)

2位:ラム・マトン(24kg)

3位:チーズ(21kg)

4位:牛肉(酪農用)(21kg)

5位:チョコレート(19kg)

6位:コーヒー(17kg)

7位:エビ(養殖)(12kg)

8位:パーム油(8kg)

9位:豚肉(7kg)

10位:鶏肉(6kg)

 

ご覧頂いてお分かりの通り、牛肉(食用)が60kgということで圧倒的な温室効果ガス排出量を誇っていることが分かる。

 

これは、牛の放牧地を確保するための森林伐採や牛のげっぷやおならによるメタンガスの排出によるものである。

 

続けて、ラム・マトンということで羊が24kgで2位にランクイン反芻動物、恐るべしである。

 

実際の消費量は牛肉(6,800万トン/年)と羊肉(1,420万トン/年)では比較にならないので、実際の温室効果ガス排出量の絶対値という意味では牛肉が圧倒的ではないか。

 

他の種類の肉に目を向けてみると、豚肉が7kgで9位、鶏肉が6kgで10位にランクインしている

 

つまり、牛肉を1kg食べるのと、豚肉を9kg食べるのと、鶏肉10kg食べるのでは、発生させている量の温室効果ガスはほぼ同じなのである。

 

つまり、焼き肉に行って、カルビを頼む代わりにピートロや鶏肉を頼むことはかなりの温室効果ガス削減効果があるということではないだろうか(不詳)。

 

これらの肉系の食べ物の他にチョコレート(19kg)やコーヒー(17kg)などもランクインしている。

 

持続可能な生活に近づくために、これらのことを頭の片隅において日々の食生活を考えてみてはどうだろうか。

米国・卸売電力市場を多様な分散電源に開放

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米国で電力・エネルギー業界にとって“Game Changer”となりうる大きな動きがあった。

 

米国で連邦レベルの電力・エネルギー関連規制を司るFERC(Federal Energy Regulatory Commission)が多様な分散電源向けに卸売電力市場を開放する指令(Order 2222)を可決したのである。

 

米国では蓄電システム向けに卸売電力市場を開放する類似の指令(Order 841)が2018年に可決されており、系統運営機関等が具体的なルール策定・施行に取組んでいる最中。今回のOrder 2222はこの範囲を蓄電システムから太陽光やEVインフラに拡大するものである。

 

Order 2222に基づく具体的なルール策定は今後米国内の各市場で行われるため、未だインパクトの全容は分からないものの、事業者にとっては以下のような変化があると思われる:

 

  1. 分散電源の統合制御機能の有無及び制御対象量の重要性の高まり
  2. 卸売電力市場でのトレーディング機能の重要性が高まり

 

どういうことか。

 

例えば、これまでBehind the Meter(BTM)での分散電源サービスは、基本的には「顧客からのサービス料」が唯一の収入減であったところ、今後は「顧客からのサービス料」と「卸売電力市場からの収入」の二つが収入源になると思われる。

 

従い、「卸売電力市場からの収入」を得られるほど、競争力のある「顧客からのサービス料」を提示できる形となり、上記二点の優位性がBTMをはじめとした顧客向けサービス市場での競争力を左右するようになると想像される。

 

言い換えると、これまでは様々なプレイヤーが独自の戦略を追求して分散電源分野での事業展開する余地が十分があり、分散電源分野の参入障壁の低さから、実際に米国では有象無象の中小デベロッパーが活動している(BTM太陽光の場合は、太陽光向けの連邦税務メリット(ITC)があるおかげで、他先進国よりある程度は中小デベロッパーの参入が防がれている面があると思われるが)。

 

しかし、仮にOrder 2222が本格的に市場制度に反映されるようになると、規模感と機能を併せ持つ重量級プレイヤーが分散電源分野においても今以上に優位性を発揮しやすくなると思われる。

 

一方、そもそも多様な分散電源を電力卸売市場に統合することは実務的な難度が高いと思われ(実際、系統運用機関等はOrder 2222に反対していたものの押し切られた格好)、どのような市場設計・運営がされるのかは要注視。今後の展開を見守りたい。

 

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米大手ファンドBlackstone 蓄電デベロッパーNRStor C&Iを買収

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アメリカのプライベートエクイティファンドであるBlackstoneが蓄電デベロッパーであるNRStor C&Iを買収したと発表した。買収金額や条件は非公表。

 

(直近、新型コロナウイルスの影響で世界の金融市場は大混乱だが)世界的な金融緩和を受けて、投資先に困ったPEファンドが蓄電案件向けのファイナンスに強い関心を示している流れが続いているが、本件もその流れに沿ったものと言える。

 

「大型集中電源の時代」から「中小型分散電源の時代」に移り変わっていく中で、分散太陽光発電に対するファイナンスが真っ先に注目を浴びた。しかし、これは技術的にProvenな世界でありリターン水準が切り下げられていること、そしてアメリカにおいては連邦政府の税制優遇により税務当局の複雑な規制を受けながらのファイナンスが必要となることなどから、今となってはPEファンドは一定の距離感を置いているように見受けられる。

 

一方で、蓄電システムについては未だ技術的・制度的なリスクが一定程度あるとの見方が残っておりリターン水準が相対的に高いこと、そして税務当局の規制を受けたファイナンス等も原則と不要なこと(再生可能エネルギーによって充電される蓄電システム等の例外あり)などから、PEファンドが積極的に食指を伸ばしているように見える。

 

NRStor C&Iはカナダ・トロントをベートした蓄電デベロッパーであり、カナダ・オンタリオ州や米国カリフォルニア州などで電力需要家のサイトに設置する蓄電案件を200MWh超開発しているとのこと。

 

BlackstoneはNRStor C&Iの開発部隊に資金を拠出することで、その開発資産に対してファイナンスを提供する機会を獲得することを目論んでいるものとみられる。今回の買収の詳細は不明だが、資金的なサポートを得たNRStor C&Iが今後どのような取組を進めていくのか要注目である。

 

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米国バージニア州 2050年までに100%の電力をクリーン電源由来へ

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米国北東部の州であるバージニア州が、クリーン経済法(Clean Economy Act)と呼ばれる州法を上下両院で可決したことをもって、2050年までに州内のすべての電力を非化石燃料由来のクリーン電力とすることを義務付けることとなった。

 

同州法は、州内の電力会社であるDominion Virginia(州内最大の電力会社)とAppalachian Power Co.の両社に対し、①2030年までに州内で提供する電力の30%以上を再生可能エネルギー由来とすること、そして、②2045/50年までに州内の化石燃料由来の発電所を全て閉鎖することを義務付けるもの(Dominionは2045年まで、Appalachianは2050年まで)。

 

現在、Dominion Virginiaの電源構成の内、再生可能エネルギーが占める割合は約5%程度なので(水力とバイオマスが中心)、今後は陸上・洋上風力や太陽光などの開発を大掛かりに進めることが不可欠となる。元々、バージニア州再生可能エネルギー導入目標は2025年までに15%だったので、今回の州法は従来の目標から大幅に踏み込んだものであることが分かる。

 

このように、天候次第で発電量が変動する再生可能エネルギーを増やすことに伴い、電力系統の安定を保つため、同時に2035年までに3.1GWの蓄電システムの導入も義務付けられた(Dominionが2.7GW、Appalachianが0.4GW)。これは全米のみならず、世界で見てもかなりの規模感を持った蓄電システムの導入義務だと思う。

 

このニュースで興味深いのは、地元最大の電力会社であるDominionの猛烈な反対を押し切って州法が成立している点(厳密にいえばまだNortham州知事の署名が必要となるが、同州知事はこの州法を強力に後押ししているので署名しない可能性はほぼない)である。

 

本州法はDominionらの保有している既存石炭・ガス火力発電所を想定よりも早く退役させることを義務付けるものである上、一部ではあるものの地元電力会社以外の外部資本の参入を可能にする(例えば、16GW相当の陸上風力・太陽光の発電事業に35%まで外部資本が出資できるようにする(但し、残り65%はDominionが出資))内容であり、自社の既存資産の価値が毀損することに加え、地域独占が(ごく一部ではあるものの)和らぐことを嫌ったDominionらが猛烈に反対していたのだ。

 

本州法を後押ししていた政治団体などは「本州法は、Dominionが反対したにも関わらず成立する過去10年で初めての州法だ」と述べているが、これは事実だろう。それでも賛成多数でバージニアの上院・下院ともに本州法を可決したあたりに再生可能エネルギーへのニーズの高まり、並びに価格競争力の高まりが感じられる。

 

ハワイ州カリフォルニア州など、再生可能エネルギー導入の動きを常々牽引してきたわけではない州でもこうした動きが出てきたことにも意義があると思われる。米国の政治が動く今年、再生可能エネルギー導入に向けた政治的な動きがどのように進むのか注視したい。

 

www.greentechmedia.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中規模太陽光・風力向け固定買取(FIT)終了へ

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経済産業省中・大規模の太陽光・風力発電向けの固定買取価格(FIT)制度を近く終了する見通しのようだ。

 

記事を読む限りでは50~100kWh以下の小規模の商業・産業施設や家庭向けの太陽光発電に対するFITは継続する見込みだが、大半の太陽光や風力発電に対するFITは(ようやく)終了するようだ。

 

2019年度でFITに要するコストは既に3.6兆円、そのうち2.4兆円は電気料金の「再生可能エネルギー賦課金」という形で否応なしで最終消費者に転嫁されている(差額の1.2超円は一体だれが負担しているのだろう?電力会社?)。

 

東日本大震災に端を発する福島原発事故を受けた急激な潮流を受けていたという当時の背景を考えると若干同情の余地がないでもないが、世界的に笑いものになるような超高水準のFITを設定したことで国民負担を必要以上の水準に押し上げた経産省の罪は重い

 

ようやくまともな市場原理のもとでの再生可能エネルギー開発が進み、これによって国民による再生可能エネルギーに対する本質的な支持が広がる可能性も高まることを期待する。

 

ただし、日本はそもそも風力や太陽光などの再生可能エネルギー開発には全く適していない国であることはよく理解しておく必要がある。

 

そもそも国土面積が決して大きくない日本では、陸上風力や太陽光に適した土地があまりない。また、太陽光についていえば日照が良くない。

 

アメリカのカリフォルニア州では、屋根置きの太陽光発電を導入すると、1kWあたりざっくり1,800~1,900kWh程度の年間発電量が期待できるが、日本の場合はざっくり1,100~1,200kWh程度だと思われる。

 

発電容量当たりの発電量が2/3程度なので、仮に同じコストをかけて同じ規模の太陽光発電を導入すると、発電量当たりのコストは日本の方がカリフォルニアよりも1.5倍程度高くなるというざっくり計算である。

 

これに加え、現在アメリカでは太陽光発電に対する投資税額控除(Investment Tax Credit、ITC)が30%適用されているので、ざっくり太陽光発電の導入コストの30%を税額控除という形で回収できる。

 

こうした施策をとらず、再生可能エネルギーを国のベースロード電源にまで押し上げようと考えるのは楽観的にもほどがあろう。

 

真に再生可能エネルギーの普及を推進したいと考えるのであれば、市場原理を最大限発揮させつつも、化石燃料由来の電力に対して再生可能エネルギーがもつ競争力を高める施策を組み合わせることが必須である。

 

経産省が策定中の具体制度の中ではこの点が適切に考慮されることを望む。

 

www.nikkei.com

太陽光発電所の草を刈る羊

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米国の太陽光発電デベロッパーであるNexampが、ニューヨーク州太陽光発電所(7.5MW)の草刈りに150匹の羊を活用する。

 

太陽光発電システムを草の生える地面に設置する場合、定期的な草刈りが必要となる。通常は普通の芝刈り機を使うが、これは化石燃料を使うので、代わりに羊を使おうというのである。

 

しかし、実際どうなんだろうか。

 

羊は反芻動物であり、草を食べるに当たって多量のメタンガスを排出する。通常の芝刈り機を使ったときのように化石燃料も使わないし、二酸化炭素も排出しないが、温室効果二酸化炭素の25倍とも言われるメタンガスを排出する。

 

感覚的には、羊の方が芝刈り機よりもはるかに「環境にやさしい」イメージがあるのはよく分かる。が、実際のところ、どっちが環境にやさしいのだろうか。仮にこの草刈りを目的として羊が増えるのであれば、必ずしも喜ばしいことではないことのようにも思う。

 

ちなみに、Nexampというのは本社をボストンに構える米国の有力太陽光デベロッパーであるが、三菱商事筆頭株主である。三菱商事は2016年8月にNexampに出資し、以降、同社を通じて米国の分散型太陽光発電市場の成長取込みをはかってきた。羊はともかくとして、同社の動向にも注目したい。

 

www.solarpowerworldonline.com

住宅向け太陽光発電の設計にGoogleのAIを活用

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太陽光発電最大手の一角であるSunPower社がGoogleのAI Platformを活用することで、住宅向けの屋根置き太陽光発電システムの簡易設計・発電量試算を行うシステムを開発している。

 

自宅の屋根への太陽光発電導入に関心のある人が住所を入力するだけで、どの程度の規模の太陽光発電システムを導入できそうか、また、そこからどの程度の発電量が期待できるかを試算するシステムである(SunPower Instant Design、動画は以下ご参照)。

 

一見単純な機能に思えるかもしれないが、屋根上の障害物や傾き、周辺の建物や植物による影の有無などを考慮の上で太陽光パネルの導入可能エリアを特定するのは相応に複雑な作業と思われる。

 

また、発電量の予測に際しては、日照量はもちろんのこと、影の有無やパネルの傾きなどを考慮するはずにて、これまたそれなりの専門性がないと難しいものと思われる。現在は開発の最終段階で、2019年夏にリリース予定とのこと。

 

SunPower社の太陽光発電システムの設計ノウハウと、GoogleのAi及びGoogle Earth等のデータベースを組合せることで開発が実現したユニークなシステムだと思う。

 

昨年、米国カリフォルニア州では2020年以降の新築住宅に原則として太陽光発電を導入することが義務化される(例外あり)など、住宅向けの屋根置き他要綱発電の導入は既に進んでいるが、同システムによってより具体的なイメージが湧くことで喚起される需要が一定量あるように思う。

 

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